貸別荘バケーションレンタルと住宅宿泊事業法(民泊新法)

この記事では民泊新法について書いています。
民泊新法は貸別荘やバケーションレンタルと関係ないのでは?と思われる方がいれば半分正解。
でも運営方法次第では、旅館業法でなく民泊新法が適用対象となる場合もあるので、それぞれの違いも含めて書いていきます。

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

背景にはインバウンド宿泊事業の需要拡大に伴う宿泊施設不足の解消と、深刻化する空き家問題、増え続ける違法民泊、2つの社会問題への対応です。
民泊施設の法制度として、2017年に住宅宿泊事業法が成立しました。

住宅宿泊事業法(民泊新法)が規定する民泊施設とは

民泊新法が規定する民泊とは次の通り

・年間提供日数180日以下
・残りの年の過半は居住用に使われる

したがって貸別荘バケーションレンタルも上記の基準をクリアしていれば、民泊新法の適用対象です。
民泊新法が適用された施設は、その用途を住宅と位置付けることにより旅館業法の許可を受けずに旅館業(ホテル旅館、簡易宿所)を営むことが可能です
それに伴い、旅館業に関連する建築基準法や都市計画法等の規制の対象外となります。
なお消防法令上は、原則として旅館・ホテルや簡易宿所と同じ取り扱いを受けるので、注意が必要です。

旅館業の営業許可を受けないメリット

関連法令の規制対象外となることにより、従来の旅館業では実現しなかった、例えば以下のような活用事例が考えられます。

・規制が厳しく、旅館業を営むことができなかった閑静な住宅街や、鎌倉や京都などの文化エリアに建つ邸宅を活用した民泊経営
・農業体験や漁業体験などのアクティビティをセットにした民泊経営(農家民泊)
・イベント開催期間中にあわせて一時的に宿泊をとるイベント民泊
・建築確認がおりないような古民家を活用した民泊経営

年間180日の縛りはあるものの、住宅宿泊事業法による規制緩和により既存住宅を活用し、民泊を適法に営む選択肢が広がりました。

旅館業と住宅宿泊事業の比較

旅館業住宅宿泊事業
法律旅館業法住宅宿泊事業法(民泊新法)
年間営業日数365日180日
建築基準法の扱いホテル・旅館住宅
住居専用地域での営業不可
住宅からの用途変更必要不要
消防法の扱い旅館、ホテル、宿泊所その他これに類するもの(5項イ)原則、旅館、ホテル、宿泊所その他これに類するもの(5項イ)

住宅宿泊事業者の届出

住宅宿泊事業を営むには、都道府県知事への届出が必要です。
届出をした住宅宿泊事業者は、宿泊者のために次のような業務を義務付けられます。

・宿泊者の衛生の確保・・・床面積に応じた宿泊者数の制限、部屋の清掃等
・宿泊者の安全の確保・・・非常用照明設備の設置、避難経路の表示等
・宿泊者名簿の備え付け・・・宿泊者名簿の備え付けと提出
・周辺環境への配慮・・・騒音防止のための配慮、宿泊者への説明等
・苦情への対応・・・周辺住民からの苦情への対応等

住宅宿泊事業の届出には、住宅毎に次のような書類提出が必要です(法人の場合)

・定款
・登記事項証明書
・住宅の登記事項証明書
・住宅の図面
・賃貸物件の場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的として転貸を承諾した書面
・区分所有建物の場合は、管理組合が住宅宿泊事業を禁止する意思がないことを証した書類など

この中でも、特に施設が賃貸物件や区分所有建物(分譲マンション)の場合が、届出をする上では注意が必要です。

年間営業日数のカウント方法

民泊新法の年間営業日数は「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間」を基準にカウントされます。
予約の入っていない空き日は対象外、実際の宿泊日数でカウントするのですが、注意点は正午を基準にカウントされること。
例えば、4月1日15時にチェックイン、翌4月2日14時にチェックアウトした場合、実際の宿泊は1泊ですが、正午を基準にするため2営業日となります。
上記の方法でカウントし、合計180日以下で営業するのが、民泊新法で定められた営業日数の制限です。

都道府県知事への報告義務

届出した住宅宿泊事業者は、施設毎に、定期的に、都道府県知事への報告義務があります。

■報告内容

・営業日数
・宿泊者数
・延べ宿泊者数
・国籍別の宿泊者数の内訳

■報告のタイミング

・年6回。毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日までに報告
・それぞれの前2ヶ月の営業内容

営業が180日を超えた場合の罰則規定は?

民泊新法において、180日を超えて営業しても罰則はありません。
では安心か?というと、むしろそうではなく、180日を超える営業は旅館業法にもとづく営業許可を得る必要がある訳で、この場合、無許可で旅館業を運営したことによる旅館業法違反として、6ヵ月以下の懲役もしくは3万円以下の罰金が科されます。
また都道府県知事への報告で、営業日数について虚偽報告を行うと、こちらは民泊新法にもとづき30万円以下の罰金が科されます。

住宅宿泊事業者への監督権限

監督権限は都道府県知事にあり、必要に応じて、業務改善命令、報告徴求、立入検査を行います。
また、事業者に法令違反、業務改善命令違反が見られた時や、度重なる違反が見られる時は、1年以内の業務停止命令、事業の廃止を命ずることができます。

住宅宿泊事業(民泊)の限界

住宅宿泊事業には、年間180日の営業日数制限があるため、副業ならともかく、専業宿泊ビジネスとして営むには収益面で限界があります。
したがって、残りの185日を、その他のビジネスとしてどのように運営するかがポイントとなります。
不動産賃貸物件として1ヵ月以上貸し出すマンスリーマンションならば、旅館業法の営業許可が必要ないばかりか、繁忙期は民泊施設として提供、閑散期はマンスリーマンションとして貸し出すと、1年を通して安定した施設運営が可能となります。
あるいは、日中をレンタルスペースとして時間貸するのもひとつです。
旅館業の営業許可を改めてとり、日数制限なく宿泊営業を行うのも含め、年間通じた運営方法を考える必要があります。

以上、貸別荘バケーションレンタル経営と民泊新法についてお伝えしました。
より詳細な情報が必要とお考えの方は、ぜひお問合せ下さい。

 

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