この記事は、貸別荘バケーションレンタルにおける法令上の日数制限、つまり営業可能な日数について書いています。
結論:それぞれ営業日数の制限
営業日数は、「旅館業法により旅館業の営業許可を受けた」のか、「住宅宿泊事業として都道府県知事等に届出をした」のか、「特区民泊における宿泊施設」かにより変わります。
旅館業の許可施設 | 住宅宿泊事業の届出施設 | 特区民泊 | |
年間営業可能日数 | 365日 | 180日 | 365日 |
旅館業とは
旅館業とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業がこれにあたり、「施設を設け、宿泊料をとり、人を宿泊させる事業」は全て旅館業にあたり、旅館業を行おうとするものは、全て旅館業の営業許可を受けなければなりません。
住宅宿泊事業とは
住宅宿泊事業とは、「旅館業法により営業許可を受けた事業者以外が、宿泊料をとって住宅に人を宿泊させる事業」を指しています。住宅宿泊事業を営む場合は、都道府県知事への届出が必要であり、届け出た事業者は「上限180日に限り宿泊業を営むこと」が可能です。
これらは住宅宿泊事業法により定められています。
特区民泊とは
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例措置として「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(通称:特区民泊)」が、新たに創設されました。
国家戦略特区に定められた区域で住宅宿泊事業の認定を受けた場合、180日の営業日数の上限はなく、年間を通じ宿泊料ととり人を宿泊させることが可能です。
ただし、地域毎に最低滞在期間が定められており、例えば大阪市の場合は3日、東京都大田区の場合は7日です。
2022年現在、特区民泊が可能な区域は、東京都大田区、大阪府、大阪市、福岡県北九州市、新潟県新潟市、千葉県千葉市です。
営業日数に制限があるのは住宅宿泊事業のみ
民泊なら●日、貸別荘なら▲日といった区分けでなく、「旅館業で営業許可を受ける」のか、「住宅宿泊事業として届け出る」かにより営業日数は変わります。
同じ民泊施設でも、旅館業か住宅宿泊事業かにより、営業可能な日数は違う訳です。
もっと端的に言えば、営業日数に制限があるのは「住宅宿泊事業」だけです。
旅館業の営業許可をとるのは難しい?
それなら営業日数制限のない「旅館業の許可」を取るのがお得では?と考える方が合理的ではないでしょうか?
営業可能日数が多ければ、それだけ売上をより多くあげることができるから、自然な発想です。
ところが、旅館業の営業許可をとるには幾つかの法令上のハードルがあり、一般住宅やマンションでは許可をとることが難しいケースも出てきます。
一般住宅で旅館業(簡易宿所)の許可を受ける際のハードルを列挙します。
一般住宅で旅館業(簡易宿所)の営業許可を受ける際に考え得るハードル
法令 | 主なハードル | 住宅宿泊事業 | 旅館業 |
旅館業法 | 客室面積 | 旅館業法の適用除外 | 定員1人当り3.3㎡以上 |
窓面積 | 旅館業法の適用除外 | 自治体の条例による | |
玄関帳場(フロント) | 旅館業法の適用除外 | 自治体の条例による | |
便器等の個数 | 旅館業法の適用除外 | 自治体の条例による | |
建築基準法 | 用途地域 | ほぼ制限なし | 住専地域、文教地区は不可 |
用途変更の確認申請 | 不要 | 用途変更部分100㎡超の場合必要 | |
耐火建築物等要求 | 原則なし(一般住宅扱い) | 3階以上、200㎡以上は必要 | |
界壁・間仕切壁 | 一般住宅扱い | 準耐火構造とし屋根裏又は天井裏に達する | |
非常用照明設備 | 一般住宅扱い | 必要 | |
屋内階段の寸法 | 幅75㎝以上、蹴上23㎝以下、踏面15㎝以上 | 幅75㎝以上、蹴上22㎝以下、踏面21㎝以上 | |
消防法 | 自動火災報知設備 | 原則として旅館業と同様 | 必要 |
誘導灯 | 原則として旅館業と同様 | 必要 | |
消火器 | 原則として旅館業と同様 | 必要 |
既存の一般住宅を用途変更して、旅館業を行おうとする場合、旅館業法や建築基準法の規制により、営業許可をとることが出来ないケースが想定されます。
逆に、ゼロから建物を新築して貸別荘バケーションレンタルを行うなら、最初から旅館業の営業許可を想定した設計にすることです。
住宅宿泊事業の営業日数のカウント方法
住宅宿泊事業の営業日数は「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間」を基準にカウントされます。
予約の入っていない空き日は対象外、実際の宿泊日数でカウントするのですが、注意点は正午を基準にカウントされること。
例えば、4月1日15時にチェックイン、翌4月2日14時にチェックアウトした場合、実際の宿泊は1泊ですが、基準の正午を超えているため2営業日にカウントされます。
上記の方法でカウントし、合計180日以下で営業するのが、住宅宿泊事業に定められた営業日数の上限です。
年間365日営業と年間180日営業の収益の違い
では実際、年間180日営業で期待する収益をあげることが出来るのかという話になってきます。
下記は当社が運営するバケーションレンタル1棟(旅館業の営業許可を取得済み)の年間売上と営業日数(販売室数)です。
年間売上 | 稼働日数 | 客室単価(ADR) |
22,417,464円 | 204日 | 109,890円 |
ご覧の通り、住宅宿泊事業の営業日数上限180日の約10%上回りました。
こちらのバケーションレンタルを住宅宿泊事業として運営した場合、10%の機会損失が発生します。
10%の機会損失を多いと捉えるか許容範囲と捉えるかは、判断が分かれる所ではありますが、棄損する10%の売上(約200万円)は、ほぼ営業利益と捉えて間違いなく、やはり可能であれば旅館業の営業許可をとって売上最大化を狙うことをお薦めします。
通常、高収益をあげるバケーションレンタルにおいて、予約が入る可能性の高い日は、立地にもよりますが、年間200~250日と言われています。
それならば、みすみす、こちらの都合により逃すことのないよう、年365日営業でお客様を受け入れたいものです。
当社では、豊富な直営実績を基に、貸別荘バケーションレンタルの開業支援を行っています。より詳細な情報が必要とお考えの方は、ぜひお問合せ下さい。