この記事は、貸別荘バケーションレンタルを開業するために必要な営業許可について書いています。
旅館業とは
旅館業法に定める旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」を指します。
貸別荘・バケーションレンタル・民泊は、いずれも「旅館業」であり、具体的には以下の点が判断基準です。
① 宿泊料を徴収している ② 社会性がある(広く一般に募集を行い、不特定多数を宿泊させる) ③ 継続反復性がある(宿泊募集を継続的に行っている) ④ 生活の本拠でない |
旅館業法における貸別荘や民泊
一部の貸別荘では、不動産賃貸業として「短期賃貸契約」を謳って無許可営業しているところもみられますが、保健所はこれを「違法」と判断しています。
また、一般的に個人の住宅を宿泊施設として提供する民泊も、グレーゾーンで無許可営業するケースが多くみられます。
180日を超えて民泊サービスを行うには、一部の例外を除き旅館業法に基づいて営業許可を受けることが必要です。
営業が180日を超えない場合は、住宅宿泊事業法による「届出制度」により、旅館業の営業許可を得ずとも民泊サービスを認めています。
不動産賃貸業 (滞在1ヶ月以上) | 民泊事業 (年180日) | 旅館業 (制限なし) | |
旅館業法 | 適用なし 但し、不動産賃貸業を謳う無許可営業は違法 | 営業許可の適用除外 | 営業許可必要 |
旅館業法、3つの営業種別
旅館業には、「ホテル・旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つの営業種別があります。
それぞれの営業許可を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
旅館・ホテル営業 | 簡易宿所営業 | 下宿営業 | |
宿泊期間 | 1日単位 | 1日単位 | 1ヶ月以上 |
最低客室数 | なし | なし | ― |
1客室の床面積 | 7㎡以上 | 33㎡以上 | ― |
玄関帳場の設置義務 | あり | なし | ― |
建築基準法 | ホテル又は旅館 | ホテル又は旅館 | 下宿 |
消防法 | 旅館・ホテル(5項イ) | 旅館・ホテル(5項イ) | 下宿(5項ロ) |
貸別荘・バケーションレンタル・民泊の営業種別
貸別荘・バケーションレンタル・民泊は、「簡易宿所」の営業許可を取るケースがほとんどのようです。
「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」の最も大きな違いは、「玄関帳場(フロントのこと)」の設置の有無です。
ただし自治体によっては、簡易宿所でもフロント設置を義務付けるケースもありますし、旅館・ホテルでも緊急時対応や宿泊者名簿の記載等により、玄関帳場設置を不要としているので、その境界は曖昧です。
必ずしも、「簡易宿所の営業許可でないといけない」訳ではない事を、ご理解下さい。
旅館業営業に課せられる義務
① 施設の衛生確保
旅館業として営業する施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔、その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければなりません。
ちなみに、営業許可の申請窓口が保健所といのも、上記の主旨によります。
② 宿泊拒否の制限
一部の例外を除いて、宿泊を拒んではなりません。
③ 宿泊者名簿の備え付け等
施設には、宿泊者名簿を備え、宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、作成日より3年間保管しなければなりません。
旅館業の営業許可申請が必要なケース
・新しく建築物を建て、貸別荘バケーションレンタルを営業する場合 ・既存の許可営業施設で、建築延べ面積の50%以上にわたる増改築、移転等をする場合 ・既存の許可営業施設で、営業者が変わる場合 ・既存の建築物(用途が旅館以外のもの)の用途を変更して、貸別荘バケーションレンタルを営業する場合 ・営業種別を変更する場合(例 旅館営業→簡易宿所営業) |
旅館業の営業許可申請手続きの流れ
① 事前相談
施設の平面図などを持参のうえ、事前(計画段階で)に近くの保健所へ相談に伺います。
旅館業の施設は、消防法、建築基準法といった旅館業法以外の法令にも関係しています。関係法令を所管している部署、消防法なら消防本部、建築基準法なら土木事務所や建築指導課にも事前相談へ伺います。
② 住民説明等
自治体によっては、住民への説明会を求めるところもあります。
③ 学校等への意見照会
施設から概ね100m以内にある学校、児童福祉施設に対して、保健所は意見照会を行います。寄せられた意見より、教育環境が著しく害されると認められた場合には、営業許可が与えられない場合があります。
④ 建築確認申請
既存建物の100㎡を超える部分を貸別荘等に用途変更する場合、又は貸別荘等を新築する場合には、建築確認申請の手続きが必要となります。
旅館業の営業許可を受けるには、建築確認申請により交付される「検査済証」が必要です。
⑤ 消防法令適合通知書の交付申請
旅館業の営業許可申請を受けるにあたり、施設が消防法令に適合することの証明を受けるため、「消防法令適合通知書」の交付申請が必要です。
⑥ 旅館業の営業許可申請
検査済証と消防法令適合通知書を入手後、旅館業の営業許可申請を保健所に提出します。
申請を受けた保健所は、施設完成後、申請内容と相異がないか、監視員が現地を実地調査します。 調査には立会いが必要です。
申請から概ね2週間程度は期間が必要ですので、開業までのスケジュールには余裕を持ちましょう。
旅館業許可申請に必要な書類
基本的には以下のような書類を保健所に提出します。
・許可申請書 ・営業施設の構造を明らかにする図面 ・営業施設の付近の見取図 ・法人の場合は定款又は寄付行為の写し ・洗面用水が「井戸水・湧水など水道水以外の水」である場合、水質検査成績書 ・消防署長からの「消防法令適合通知書」 ・建築基準法に基づく「検査済証」 ・玄関帳場に代えて管理棟を設ける旅館業は、当該管理棟の配置図及び平面図など |
これら書類を保健所に提出して申請しますが、別の機関で審査や検査を受ける必要がある書類があります。
申請から認可まで、数ヶ月かかるものもあり、日程に余裕を持って申請してください。
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